「まっつー、おはよう」
「…おはよう」
べったり。
…この形容詞がピッタリ似合う。
ヒナは最近本当にこいつがお気に入りで、事あるごとに「まっつー」と呼び付いてまわる。
その姿はさながらインプリンティングされたヒヨコそのものだわ。
「でも参考書をひらいているヒナちゃんとエロ本をひらいているアキちゃんが並んでるのはねぇ…」
あ、せーちゃんもやっぱそう思う?
どう見ても変よね、あれは。
「せめてあのエロ本がなんとかなれば…」
作戦1、強奪
「桃松、そのエロ本は没収するわ」
「急になにさ?」
「えぇいうるさい!とにかく渡しなさい!」
「あぁん、おやめになってお代官さまぁん」
なんとか全力でエロ本を取り上げて隠すと、桃松はしぶしぶ机で不貞寝した。
これを習慣づけていけばそのうち学校にはエロ本を持ち出さなくなるんじゃないかしら。
数日後、桃松の机にはエロ本は無かったけど、机そのものに春画が描かれていた。
「全力でプリントしてみました」
「あんた本物のバカでしょ」
私は泣く泣くその机に粉洗剤をかけて雑巾で拭った。
エロ本は没収しないことにした。
作戦2、殴る
ゴン
「痛い、急に何するの」
「あんたがエロ本を開く度に殴るという制度を作ったわ」
「なんという恐怖政治」
手っ取り早い服従方法なんて暴力が一番なのよ。
犬だって意味無く吠える度に口をきゅって掴めば意味がある時にしか吠えなくなるっていうし。
エロ本を読めば痛い目にあうって思わせればいいのよ!
数日後、桃松の頭には黄色いヘルメットが乗っていた。
「そのヘルメットは何よ」
「なんとなく」
そんなもんなんとなくで被るんじゃないわよ。
作戦3、釣る
「桃松」
「なにー?」
「今度から桃松がエロ本を開かない日があったら次の日にはご褒美としてクッキーをあげるわ」
「いらない、太る」
釣られなさいよ。
「じゃあ、こんにゃくゼリー…」
「毎日こんにゃくゼリー食うと飽きるよ」
味変えればいいじゃない。
そうね、食べ物じゃ釣れないわよね。
「わかったわ、せーちゃんに好きな服を着させてあげるわよ!」
「それいつでもできるからいい」
「ひどいわ二人とも…」
ちっ、これもダメなのね…。
こいつ本当に何が好きなのよ?
「みどりん、たぶんみどりんの胸が一番…」
「せーちゃん、みなまで言わないで」
作戦4、…
「もうダメ!ネタ切れ!」
「アキちゃんを躾けるのがこんなに大変だと思わなかった…。
今まで野放しにして好きなことしかさせなかったから…」
だからあんな奔放に育ったのよ!
なんであれを野放しにしてたのかがわからないわ!
「みどりもせーちゃんも、この間から何してるの?」
「ヒナ〜…あいつのエロ本をどうにかして…」
「?」
ヒナはスタスタと桃松に近寄ると、ひょいとエロ本を取り上げた。
「委員長、何すんのさ」
「んー…」
案の定、取り返そうとした桃松をヒナはひらりと避ける。
そのままヒナは自分の唇に指をあてると小さく笑った。
「これは、今日はちょっとおあづけ」
甘いわね、ヒナ。
そんな程度じゃこいつは…。
「…飴一つで手を打とう」
えぇええ。