部活もないとても早い放課後。
相変わらず俺は桃松家に入り浸って夏雄さんの傍でせっせと家事をしている。
「あ、そういや2階の掃除機かけたのっていつだっけ」
しばらくやっていなかったはずだ。
俺はドタドタと掃除機を抱えて階段を上った。
家事というのは後に回すとドンドン溜まっていくんだから思いついたときにやらないと。
「夏雄さん!掃除しますよ!」
ノックを3回。バタンとドアを開けると、ベッドの上で小さくうずくまる夏雄さんが居た。
「どうしたんですか?そんな格好して…」
お腹でも痛いんだろうか。
だったら相当な痛がりようだし病院に連れて行ったほうがいいかもしれない。
「夏雄さん?」
「だ、大丈夫だ。俺のことは気にせずに妹の部屋へ行ってくれ…!」
夏雄さんの体から尋常じゃない汗が噴き出ている。
「俺のことはいいから!早く行くんだ!」
どんなにつらそうでも、俺には夏雄さんの命令を断ることができない。
…惚れた弱みかな。
でも放っておくなんてできない俺は、夏雄さんの言うとおりアキに助けを求めることにした。
「アキ!」
アキの部屋に入ると、今度はやけに怒り心頭のアキがいた。
「…なに」
「大変だ、夏雄さんが…!」
「あぁ、今は見ないであげて。とくにノリはダメ」
…どういうことだ?
俺にはかっこ悪いとこなんて見せられないってことか?
そんな、俺は夏雄さんの恋人なのに…!
「夏雄さん、どうしたんだ?あんなに苦しがって…」
「あ、見たの?あぁ、兄ちゃんかわいそー」
なんだそれ、俺に見られたらかわいそうって…!
「俺は、俺は夏雄さんに何かあったら気が気じゃないんだぞ!」
「大丈夫だよ、ノリが考えてるような深刻なことじゃないから」
深刻じゃ、ない?
あんなに苦しがってるのに?
「…ノリ、兄ちゃんがどこ押さえて苦しんでるかちゃんと見た?」
「お腹じゃないのか?」
アキは笑いをこらえながら、フルフルと顔を横に振った。
「男がエロビデオ見てる最中に扉開けちゃ可哀想だよ、ノリ」
そのひと言で俺はすべてを理解した。
ついでに掃除機でアキをポカリと殴っておいた。