不器用だなぁって思う。
私が悩むようなことにはケロリとしてるくせに私が悩まないことにはすごく悩む。
これって私が不器用なのかな。
それともまっつーが不器用なのかな。
「はぁ、しかしヒナと桃松が……」
みどりは昨日からずっとこんな調子。
私の部屋でずーっと「ヒナが…桃松が…」とゴロゴロしてる。
「まさかヒナがそういう目で桃松を見ていたなんてねぇ…」
「そういう目って?」
「どうせ庇護欲とか母性本能とかそんなもんだと思ってたのに……」
私も最初はそうかな?と思ってたけど、違ったんだもん。
誰かに奪われたくないって思っちゃったから、恋かな、と。
他の人に笑いかけるのを見ると少しモヤっとしちゃう。
これも恋だよね。
「あー…、なんかもう、殴りたいアイツ」
「みどり、ダメだよ」
「だぁってぇ」
みどりはぶーと頬をふくらますと、すぐにしゅるしゅると空気を抜いた。
変なの、可愛い。
「女同士とか悩まなかったわけ?」
「まっつーは気にしてたみたいだけどね」
「ヒナは?」
んー、私はそうでもないかなぁ。
女の子っていうより、「まっつーが好き」って思っちゃったから。
なんていうか、性別とか気にしてる場合じゃなかったし…。
「ふーん、ヒナのそういうとこって綺麗よね」
「綺麗?」
「うん、なんかうらやましい」
そうかな。
私はいつもみどりがうらやましかったけどな。
いつも自分の意見でぐいぐい走って私を引っ張っていってくれる。
まっつーもせーちゃんも、みどりのこと大好きだもん。
私にはそういうまっすぐな感じって無いから、すごくうらやましい。
「あー、しかし桃松どう殴ってやろうかしら…」
「だからダメだってば」
まったくもう。
なんだかんだでみどりもまっつーのこと大好きなんだよね。
私のライバルってきっとすごく多い。
美幸ちゃんも奈央さんもみどりもすごく魅力的。
女の人が大好きなまっつーだから、すごく不安。
能登代君なんてまっつーに告白してたらしいし、うーん。
まだまだ余裕無いなぁ。
アメリカ行っちゃうのやっぱりヤダなぁ。
「もう、そんな顔しないの」
「変な顔してた?」
「眉間に皺がにょーんよ」
あはっ、変なの。
みどりのほうが変な顔じゃない。
「そうそう、笑ってなさいよ。
いつ写真取られるかわからないんだから」
みどりはいたずらっぽくカメラを取りだすと、一枚だけ撮った。
「ほんとに私ばっかり撮るね」
「明日には桃松と並べて撮ってやるわ」
「焼き増しお願いしまーす」
まっつーとツーショットってまだないもんね。
前に美幸ちゃんと賭けたことがあるけど、あれは結局うやむやにされちゃったし。
ちゃんとしたやつ、やっぱり欲しいなぁ。
「しかしせーちゃんは気付いていたなんてねぇ」
「ビックリだね」
昨日はみどりとせーちゃんと部屋でお茶会をした。
その時に「実は」とまっつーと付き合ってることを言ってみたんだけど…。
「実は、二人に話しておかないといけないことがあるんだけど…」
「なに?」
「どうしたの?」
二人はクッキーに伸ばしていた手を止めてこっちを見た。
「私、まっつーとお付き合いをすることになりました」
みどりは一瞬ビシリと、体を固くすると大きく口を開いた。
「えぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!?」
「あ、ごめん。私知ってる」
「「えぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!?」」
せーちゃんがサラリと言った言葉に、私とみどりは固まるしかなかった…。
と、いう出来事がありまして。
「顎が外れるかと思ったわ」
「私も…」
やっぱりせーちゃんって凄いなって思った。
気付いてたらしいんだけど、でも後からまっつーに聞いたんだって。
でもなんか嬉しい。
まっつーのほうから誰かに言ってくれるって、なんか独りよがりじゃなくて、
ちゃんとまっつーと付き合ってるんだなーって思えて嬉しい。
「ヒナ、へらへらしてる」
「ごめん」
つい…。
なんだかまっつーと喋ってない時のほうが笑顔でいる気がする。
そういうものなのかなー。
「お付き合いってやっぱりわかんないな」
「そう?」
「え?」
どっこいしょ、とみどりは身を起こすと、ふふんと鼻を鳴らした。
「付き合ってどうしたらいいかわからなくなるのは、目標がないからよ」
「目標?」
「好きって思ってじゃあ両想いってなったら大体のカップルって別れるでしょ?」
「みどり、それ偏見じゃないかな?」
「手に入れたモノなんてつまらないって思うわけよ」
みんながみんなそうだったら世の中子どもができないよ…。
惰性もあると思うけど、やっぱり愛があれば長続きするってこともあるんじゃない?
私はまだまだ、まっつーのことなんてつまらないなんて思わないと思うけどな。
わからないのは、自分の気持ち?
それとも、まっつーの気持ち?
「付き合うって目標が達成されて、次の目標がないから楽しくないのよ」
「うーん?」
言いたいことはわかるような、おかしいような。
私は今、すごく楽しいけどな。
まっつーが構ってくれるだけで、心が暖かくなる。
「ステップアップが必要なわけ」
「具体的には?」
「そりゃあ、結婚?」
ちょっと遠すぎるかなー。
まっつーと結婚しようと思ったら海外行かなきゃだし…。
もしくは日本の未来を変える?
頑張りたいけど、一人では厳しいよね。
「近い目標でもいいのよ。
とにかく相手に興味を示す!」
「興味、かぁ」
知りたいことはまだまだいっぱい。
自分が笑顔でいるために、まっつーに何をしてほしいんだろう。
まっつーは私に何を望んで、付き合ってくれたんだろう。
「まぁ、桃松のことだから、ヒナの体に興味深々なんでしょうけど」
「そ、それはどうかなぁ」
やっぱり、そういうことしたいのかな…。
私は今のところ、まっつーとしたいことがいっぱいあるけど…。
例えば、手を繋ぎたい、とか。
例えば、まっつーの手作りおでんが食べてみたい、とか。
例えば、頬を撫でてみたい、とか。
考えるだけでも結構、顔が熱くなる。
「ヒナ、なんで顔を赤くしてるの?」
「聞かないで…」
あと一番してみたいことがあるけど。
これはさすがに言えない。
大体、まっつーが遊び慣れてそうな感じがしてるのが、悪いと思う。
私は何もかも初めてなのに。
でも誰かと付き合うのは初めてだって言ってたし……。
「タイミング、難しいよね…」
「なんの話してるのよ」
やっぱり直接話して、色々聞いてみなきゃ。