問題、秋といえば何があったでしょうか。
「もうすぐねー、文化祭」
「今年は去年みたいに衣装バラバラじゃないし楽でいいやねー」
「でもアキは今年も技術責任者だろー」
「あー、ダリー」
しゃっきりしない4人組。
これは私たちの後ろで繰り広げられてる会話。
もちろんそんな会話をこの私が見逃すはずがない。
「こらそこの仲良し4人組!しゃっきりしなさい!
野沢君とせーちゃんまで巻き込んで反省しなさいよこのダルダルコンビ!」
「ダルダルコンビって…あたしが怒られるのはわかるけど巽まで怒り対象に入るのか」
「最近鈴城は俺に対して厳しいな」
「あんたたちが二人揃っていつもあたしに苦労かけさせるからでしょうがぁあ!!!」
桃松と能登代君の耳を掴んで引っ張り上げると、二人とも痛いといいながらも緩い顔をしていた。
懲りないわねこいつら〜。
「まぁまぁ、落ち着いてみどり」
「ヒナ〜」
隣に居たヒナがよしよしと頭を撫でてくれた。
「この4人は本番が近付くにつれて結局誰よりも楽しむから」
「…あ、そう」
ヒナ、そのセリフはちょっと腹黒いわ。
でもそうね、確かにそうだわ。
こいつらなんだかんだでお祭り大好きだもの。
「今年もまっつーはまたどこか手伝うの?」
「決めてないなー。報酬次第かな」
そういえば去年はテニス部を手伝ってたのよね。
「せーちゃん、テニス部は今年何やるの?」
「女装屋台」
せーちゃん普段通りじゃない。
「水泳部は?」
「私たちはやっぱり今年も喫茶店」
「毎年恒例だしね」
ちなみに1年生の時は料理サイド、2年生はウェイトレス、3年生は客引き。
つまり今年は客引き。
面倒よねー。こういうのって普通1年生と3年生の役割逆じゃない?
あー、私もダルくなってきたー。
「ねぇ桃松、今年の我がクラスの装飾はどうするわけ?」
「どうするっつってもね」
桃松は開いていたエロ本を閉じると、くるりと教室を見まわした。
…こいつがエロ本を開いてることに誰も突っ込まなくなったのは果たしていいのかしら…。
「今年のテーマは執事喫茶だしなぁ。やっぱ大人っぽくシックな感じかな」
そう言うと、エロ本をくるりと丸めてあの辺にはアレ、あの辺にはアレと適当にいいだした。
「何、もう決まってるわけ?」
「うん。大体」
こいつはほんとにやることはやるんだから…。
「あ、もちろんみどりんのために特別衣装をこしらえてあるから!」
「なによ、私のためって」
「じゃじゃーん!」
ゴン
「布一枚で何を隠せってのよ!」
「うぅ、誤解だ…」
あんたは私を露出狂にする気か!
「だから誤解だって〜」
「はあ?」
「これをつけて上から服着るんだよ」
これをつけて?
この布でどうするってのよ。
まさか…
「ふんどし?」
「みどりん、それ本気?」
じょ、冗談よ。
別に他のものが思いつかなかっただけよ。
「あ、もしかしてサラシ?」
「そう、さすが委員長!賢い!」
桃松、それあたしがバカだっていいたいの?
悪いけどあんたにだけは言われたくなかったわよ。
「さすがにその胸で執事とはいかないよね、と思ってさ」
言ってることはしっかりしてるけどバッチリ胸目線で喋るの止めなさいよ。
「でも私じゃなくても胸は気になるんじゃない?」
「んー」
そこでヒナの胸まで見るな。
私がぐきりと桃松の首を折ると、桃松はそうかも、と唸った。
「スーツだとCでも目立つよね」
「『でも』って言った…」
「ヒナ…」
失礼なヤツだわほんと。
今のヒナを私が慰めると嫌みになりかねないし…。
「アキちゃんぐらいなら大丈夫じゃない?」
「理想としては美幸ぐらいの胸だよね」
「アキせんぱぁあああい!!!」
あらうっかり、みたいな顔するんじゃないわよ、桃松。
「これぐらいの世間話に名前を出すくらいなら出てこないと思ったのに」
「ふふふ、他の人ならまだしもアキ先輩の口から私の名前が出たなら私のレーダーが反応するに決まってるじゃないですか」
決まってないわよ。
「ちょうどいいや、美幸」
「なんですか?」
「ちょっと失礼してよ」
「なんで中途半端にお嬢様言葉なんですか?」
桃松はどこからともなくメジャーをとりだすと、美幸ちゃんをくるくる回し始めた。
「あーれー!おやめになってぇん!」
「ぐへへ、よいではないかよいではないか」
やると思ったけど。
そもそも逆でしょう、それ。
巻くときじゃなくて剥ぐときでしょ。
「んー、上から65、65、65だな」
「私どんだけ寸胴なんですか」
ドラ○もんより寸胴よね。
むしろ筒だわ。
「委員長」
「なぁに?」
「ちょっと失礼」
桃松はヒナも呼び寄せると、メジャーでヒナのスリーサイズを測っていった。
「ひゃぁ!?」
「うん、張りよし」
「スリーサイズを測るついでに肌の張りをチェックするヤツがあるかぁ!」
ヒナの代わりに頭を凹ませると、ぐへぇと笑った。
気持ち悪いわよさっきから。
「んー、83 58 85」
「それ加●夏樹のスリーサイズだろ」
よく知ってるわね、能登代君。
「とりあえず7cmかな」
「なんのサイズよ」
そこでキラリと目線が光る。
「み〜ど〜り〜ん」
「私は絶対測らせないわよ」
「ヤダなぁ、学祭のためだよ〜」
じりじりとにじり寄る桃松。
ふっ、私はいつでも戦える状態にあるわ!
右手の拳をちらつかせると、むむと顔をしかめた。
来るなら来なさい!返り討ちにしてやるわ!
「ほら、スムーズに行こうね」
低く姿勢を構えた桃松からひょいとメジャーがとられる。
「ぶー」
「ヒナなら安心だわ」
ヒナが私のサイズを測り始めると、桃松が後ろからそれを覗きこんだ。
って見てるとこ違うわよ桃松。
「なるほどねー。これはすごい」
「うるさいわねー」
「まっつー、これでいい?」
「んー、あと一か所測って」
桃松は自分の胸でジェスチャーを始めた。
あー、えー。そんなとこ測るのー?
ヒナは言われた通り、私の胸の下からメジャーを伸ばした。
「んー、12cmぐらい?」
「かな」
そんなとこ測ってどうするのよ。
「よし、みどりん!このサラシで標高12cm縮めたら美幸と同じに見えるよ!」
「アキ先輩、ちょっとこっち来てください♪」
私は助けないわよ。
ドアの向こうから悲鳴とも嬌声ともつかない声がするけどスルーよスルー。
「あぁんアキ先輩!もうおよしになってぇん!」
「おーっほほほ!まだまだ行くザーンス!」
立場逆転してんじゃないの。
桃松、あんたはもう何キャラなのかわからないわよ。
呆れて視線を戻すと、ヒナが自分の胸を見やってションボリしてるのを見つけた。
「ヒナ、なんでショボくれてんのよ」
「…みどりと同じサイズになるのに5cm…」
私と比べてたのね。
別に大きくたっていいことないのに。
「彼女たちは俺たちが男だということに気づいているんだろうか…」
「気にするなよノリ。今に始まったことじゃないだろ」
「無防備よねー、まったく」
野沢君、能登代君、せーちゃん、ごめん。