Lily memo %



私の恩人はもうダメかもしれない4


「う…ん…?」

朝起きると、なんというか酒池肉林?
人口密度の高い部屋で男の子と女の子が入れ混ざって寝ている。
それに寝相が関係して大変なことになっている。

「んー…もう朝―?」
「おはよう、みどりん」

みどりん、ジャージめくれてる。
下乳見えてるわよ。
まだむにゃむにゃ言っているみどりんのジャージを無言で下げてあげた。

「なんか凄い部屋になってるわねー…」
「酒池肉林よね」
「なにそれ」

お願いだから勉強して、みどりん。

「あら、なんかドキドキする光景がここに…」

ドキドキする光景?

「うわっ、気持ち悪っ!?」
「そう?」

なんでスーパー君と巽が抱き合って寝てるのよ。
…っていうかみどりん今ドキドキするって言った?

「うん、なんか萌えるわ」

腐女子だったの…?
ノリみたいに片方が美少年ならわかるけど、この二人はナシじゃないかしら。
なんかもう気分は筋肉の祭典よ?

「あぁ、そんな場合じゃないわ!先生が起こしにくる前に戻るか隠れるかしなきゃ!
 巽もスーパー君も起きなさい!ほら!」
「うぐ…」
「んぎゅ」
「いやだからって顔を踏みつけて起こすのはダメよせーちゃん」

それから男の子の顔を片っ端から踏んでいって準備完了。

「もうちょっとマシな起こし方無かったのせーちゃん…」
「男の子なんてちょっとぐらい乱暴にやらないと起きないんだから!」
「男の子にそれ言われてもねぇ」

なんとでも言って!
2日目で空港までリターンなんて嫌だもの!

「あ、やだ。私まだ化粧してない…!」
「寝起きだものね」
「やっぱり巽は起きないで!」
「ぐえっ」
「せーちゃん、やることがえげつない」

起きようとしていた巽のお腹にボディーブローを決め込んで沈めると、布団の中に押し込んだ。
今急いで戻るよりは昨日の夜みたいに布団の中に隠れてたほうがよさそうね。
そう決めると、全員が布団に入ってるのを確認して私はみどりんの布団の中に潜り込もうとした。



カチャリ



あ、ヤバ…。



「あら、もう起きてたの?感心ね。
 みんなも起こしてあげてね」



パタン



…バレなかった!?

「せーちゃん、さすが」

嬉しいんだか嬉しくないんだか…。
先生も奇抜な男子生徒の顔ぐらい覚えててよ。
うぅ、心臓バクバクで痛い…。

「さてと、巽が起きる前に洗面所に行って化粧しなきゃ」
「じゃあヒナたちも起こす?」
「そうね」

そこまできて初めてアキちゃんたちの方を見た。




「…すー…」
「…」




アキちゃん、いろいろ真っ赤。

「助けて、誠二」

いつから目を覚ましてたのかしら。
微笑ましいからとりあえず放置かな。

「無駄だと思うけど言ってみるわ、ヒナから離れなさい桃松」
「できるならやってるよ」

アキちゃんのこんな下がり眉はめったに見れないものね。
新鮮新鮮♪
アキちゃんにこんな顔をさせられるのなんて奈央さんぐらいだったもの。

ヒナちゃんの左手はアキちゃんの頭に固定されてて、右手は腰に回されてる。
抱きかかえるようにしてホールドされてるかと思えば足まで巻きついて…。
布団は脇のほうへ追いやられていた。
すごい密着感。
その体勢から導きだされた答えはといえば…。


「…顔、近すぎ…」


耳まで赤いわよ、アキちゃん。
普段自分から色んな人にセクハラするくせに他人に触られるのは慣れてないわよね。
昔夏雄さんがアキちゃんの胸を掴んだ時は夏雄さん死ぬんじゃないかと思うほどフルボッコだったわ。
その割にアキちゃん自身は夏雄さんの下半身のブツとか平気で握り潰すのよね。怖いわ。

「…んぅ…」
「う…!?」

ヒナちゃんが少し身動ぎすると、さらにアキちゃんの顔が赤くなる。
ちょっと楽しい…。

「みどりん、アキちゃんは今ヘタレだから放っておいて良さそうだし洗面所行こっか」
「そうね、今のあいつに襲う元気はないわね」
「ちょっとー!?」

アキちゃんは自力で抜けだすことを試みたのか、少し乱暴にヒナちゃんの体を引き剥がそうとした。

「…うぅ、お腹柔らかくて押せない…」

それちょっと失礼よ、アキちゃん。

「目片さんを起こせばいいんじゃないか?というより今すぐ起こせ、すぐ起こせ」

あらスーパー君、いつから見てたの?
よしよし、巽はまだ起きてないわね。
白目剥いて泡吹いてるけど全然問題がないわ。

「委員長、起きて」
「んんー…」
「委員長!」

アキちゃんが声をかけると、ヒナちゃんはやんわりと目を開いた。

「…?…」

あ、状況を理解出来てない感じ。
顔を固定されてるせいか、アキちゃんは顔を逸らせずに目だけを逸らしている。



「…ぁ…」



起きたわね。
ヒナちゃんの顔が目の前にあるものを理解した瞬間、シュワッと赤くなった。

「や、やだっ!まっつー近い!」

ヒナちゃんは大慌てでアキちゃんを突き飛ばした。
…とばっちりね、アキちゃん。

「…誰のせいで…」

あら、アキちゃんお怒り?
ヒナちゃんは寝起きで頭が働かないのか、あわあわとみどりんにしがみついた。

「わ、私変なとこない!?何かされてなかった!?」
「えぇえぇ、大丈夫よヒナー……くっくくくっ…」

みどりん、笑い漏れてる。
頑張って噛み殺してるけど漏れてる。
それからヒナちゃんは自分のジャージの中を覗いて、ほぅっと息を漏らした。

「…良かったぁ」

あ、ヒナちゃん後ろ…。




「いいわけあるかぁあああああ!!!!!!!」

ゴンッ


















「まだヒリヒリする…」
「ふっ……くくっ…」

みどりんはまだ笑いが止まらないそうよ、ヒナちゃん。
ヒナちゃんは殴られた頭をさすると、溜息をついた。

「だって…寝てる間に変なことされたんだと思ったんだもの…」

密着してたのはヒナちゃんよー?
そのうえ寝る前からそこそこ密着してたじゃない。
それはもう楽しそうに。

今現在は国際通り。
事前に打ち合わせておいた場所をみんなでうろうろ回る。
たまにウィンドウショッピングみたいなことしながらお土産めぐり。
アキちゃんは巽とノリと一緒に先を歩いてる。
ちょっぴり機嫌悪いみたい。

「あっ」

アキちゃんは少し立ち止まると一つのお土産やさんに入っていった。

「どうしたんだ、アキ」
「本当にあったんだ…」

アキちゃんが手に取ったのは、一つのちんすこう。

「また凄い形をした…」
「ち○こすこうだって」
「これはひどい…」

楽しそうね、3人とも。
こっちは全員引いてるわよ…?

「よし、兄ちゃんのお土産確保!」
「えぇえ」

夏雄さんキレるんじゃ…、いや、喜びそうね。
どうして男の子ってこう野蛮なのかしら。
…あ、アキちゃん女の子だわ。

「見てヒナ、これ可愛い」
「あ、ほんとだー」

…ごめんね、二人とも。
そんな無理やり別の方向見て楽しませて…。

「よし、次行ってみよう!」

今のでテンションあがったのかアキちゃんは意気揚々と歩きだした。

「次はどこだっけ?」
「んーと、お昼ご飯だね。有名なタコライスの店」

アキちゃんって割とタコライスとかタコス系のもの好きよね。
店は混んでいて、中には知った顔もちらほら見える。

「…ん?目片さん!」
「武下君」

あら、スーパー君の班もこっち来てたのね。

「僕の隣、空いてますよ」

見れば、しっかり6つ席が空いている。
さっき違うクラスの班が出て行ったばかりだそうだ。

「じゃ、ここにしよっか」

みんなが座ると沖縄のお姉さんが注文を聞きに来てくれたのでみんなでタコライスを頼む。
機嫌が完全に良くなったアキちゃんはウキウキとストローカバーで遊んでいる。
ハイビスカスティーが気に入ったみたい。

「アキちゃん、一口ちょうだい」
「どぞー」

自分のパインジュースを差し出すと、同じようにハイビスカスティーが差し出された。
んん、すっぱい。

「ありがと」
「うん」
「桃松、私も」
「はいよー」

そこで、なんとなくヒナちゃんの方に目線がいった。
ヒナちゃんも自分のシークヮーサージュースを差し出すと、アキちゃんに笑いかけた。

「私も一口ちょーだい」
「ヤだ」

アキちゃんひどっ。

「…だって委員長と間接キスなんかしたらまた変な疑いかけられそうだし」

ぶっすりと視線を逸らしてそう答えると、ヒナちゃんはがっくりと肩を落とした。

「もー、ごめんって言ってるじゃない」
「いいですよーだ、どーせあたしはド変態ですよー」

まぁそれは否定しないけど。
ややこしくなるから私もみどりんも口を出さない。

「ハイビスカスティーなら俺のをやろうか?」

巽、KY。
私は巽のハイビスカスティーを奪うと、一気に飲み干した。

「ちょ、なにす…」
「店員さーん、この子に沖縄ウコン茶お願いしまーす♪」
「誠二、てめぇ!」

まずいというよりつらいのよね、あれ。
沖縄の人のために言っとくとまずいわけじゃないの、ほんとに。
あぁちょっとグリグリしないでよ巽ったら。

「…はい」

アキちゃんは観念したのか、ちょこっとハイビスカスティーを差し出した。
それを受けてヒナちゃんは凄く嬉しそうに自分のジュースを差し出す。

「ありがとう」
「…」

アキちゃん、耳だけ赤いわよ。
照れてる時にその微妙な癖って可愛いわよね。
ヒナちゃんは自分のジュースが返ってくると私とみどりんにも一口交換を求めた。

「目片さん、僕のゴーヤ茶もどうですか」
「ごめんね、男の子のはちょっと…」

そこでこっちをガン見しないでくれる?スーパー君。
彼女たちの中で既に私は女の子勘定なのよ。
っていうかゴーヤ茶って…。
スーパー君って意外とお笑い体質よね。



















民宿に帰ると、アキちゃんはいそいそと携帯をいじり始めた。

「何?」
「奈央ちゃんにメール」

あらら。
アキちゃんは本当に奈央さんが大好き。

「お土産買ったよって送った」

そっかそっか。
アキちゃんの頭をよしよしと撫でると、やめいと振り払われた。

「何買ったの?」
「これ」

カサリと出されたのは小さなティーパック。
あぁ、それであんなにハイビスカスティーばっかり飲んでたのね。

「奈央ちゃんって紅茶好きだから。
 一番おいしいとこ選んで買ったんだ」

誇らしげに胸張っちゃってまぁ。




「んで、それは誠二のだよ」




「え?」

アキちゃんの手に返そうとした手が止まる。
私の?

「誠二も紅茶好きでしょ。
 奈央ちゃんの分も誠二の分もあたしの分も買った」

アキちゃんの手には2つ分のパック。

「帰ったら3人でお茶しよう」

いつものニヤリとしたのじゃなくて、ニコリと笑うアキちゃん。
…惚れるなっていうほうがおかしいのよね、この兄妹。

「アキちゃん、大好き」
「何、急に。そんなに紅茶嬉しかったの?」
「そういうことにしとく」
「?」

ふふふとアキちゃんに抱きつくと、アキちゃんはやんわりと抱きとめてくれた。
アキちゃんの傍はやっぱり元気になれる。



「…ヒナ、この場合は不純異性交遊にあたると思うから止めるべき?」
「でもみどり、見た目は完全に不純同性交遊だよ…?」



二人とも、聞こえてる。
そもそも不純同性交遊も止めるべき対象じゃないの?
不純なんだし。

「そもそもどうしてせーちゃんが流れで女子部屋に入ってきたときに誰も止めなかったのよ」
「仕方ないよ、すごく自然だったんだもん」

朝バレなかったからそのまま入ってもバレないかなーって思って入ってみたら本当にバレなかったわ。
我ながらビックリよ。

「男女ともに突っ込みすらしなかったね」
「お風呂一緒に入ってもバレないんじゃない?」

それは私が遠慮するわ。
一応付いてるものは付いてるんだもの。
女の子みんな倒れちゃう。

「誠二、昨日お風呂入った時に男子何人かガッカリしてなかった?」
「してたけど、なんで?」
「やっぱり…」

何かしら。

「お願いだから今日はお風呂入る時タオルを全身に巻いて入ってあげて」
「いいけど、なんで?」
「男の子の夢は壊しちゃダメだよ、誠二」

アキちゃん、私も男の子よ?
あれ、でもそういえば…

「そういえばスーパー君だけ私の裸を見て鼻血出してたわね」
「武下何してんのあいつ」

そっちの気でもあるのかしら。
ヒナちゃんラブかと思えば巽と抱き合って眠ったり…美幸ちゃんと同類?
とりあえず今日はスーパー君のためにアキちゃんの言う通りタオルを巻いて入ろう。
うん、床が血だらけにならないために。

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