Lily memo %



あたしもうダメかもしれない8


「はい、桃松確保」
「…あのー」
「さてと、女子3人は決まったね。
 もちろん男子3人と言えば…」
「目片さん!ぜひ僕と…!」
「あ、野沢君。こっちこっち」
「能登代君とせーちゃんと、うん、3人」

憐れ、武下。
というかあたしも憐れだよ。

「あたしに拒否権は?」
「ないわよ」

みどりん、思いやりって知ってる?

時は5月、話題は修学旅行。
本日のHRはその班決め。
2日目は男子3人女子3人で沖縄の国際通りをまわるのだ。

ちなみに就寝時は男女別に分けられる。
大部屋にずらりと布団ひいて雑魚寝だ。
なんで今時民宿かなぁ、最近の高校生の修学旅行っつったらもうホテルでしょうに。

「国際通りはどこまわろっか」
「タコライスだよやっぱ」
「お土産はここで買いたいわよね」
「さっすがせーちゃん、わかってるじゃないの」
「誠二も鈴城もそういう店好きだよなぁ」

おーい、なぜあたしを中心にしてあたしを放置している!
あたしだって行きたい場所の一つや二つあるんだよ!?

「…沖縄ってまだストリップショーやってるんだよね」
「行くなら一人で行け」

みどりん、めりこんでる。なんかめりこんでる。
あたしの頭が凹っちゃう…!

「でもハブとマングースのショーは見たいなぁ」

意外と楽しい趣味をお持ちですね委員長。
あとそれストリップとなんも関係ないです。
…もしかしてストリップショーの意味を知らない…?

「沖縄って言ったら海ぶどうだろ」
「巽、沖縄についてそれしか知らないんでしょう」
「…ちんすこうも知ってるぞ?」

ちんすこうと言えばあからさまにギャグの効いた形をしたちんすこうがあるらしいけど本当かな。
18才未満禁止な形だけど本当に普通に売られているんだろうか。
修正とかいれずに大丈夫なのかな。
もしかしてお菓子に黒い線とか入れられちゃってるんだろうか、ぜひ見たい。

「よし、あたしは沖縄に行ってちんすこうを買う!!」
「何を意気込んでるかは知らないけどとりあえずお土産屋さんは巡るわけね」
「兄ちゃんの土産はノリに任せるからいいんだけどさ、
 一応父ちゃんと母ちゃんにも土産を買いたいんだよ」

さすがにそれには例のちんすこうは選ばないけど。

「そういえば、まっつーのお父さんとお母さんってどういう人なの?」

どういう…と、言われても。
委員長がゆったりと地図に丸をつけながらあたしを見る。

「普通のお父さんと普通のお母さんだけど」
「…」

え、なに、みどりん。その疑うような眼差しは。

「ノリ」
「確かにおおらかで優しい普通のご両親だよ」

ほら見ろ。

「ふっ、私にはわかってるわ…」

みどりん、何が?



「あんたのお父さんの名前は春なんとかで、お母さんの名前は冬なんとかでしょう!」



春なんとかと冬なんとか…。
まぁあながちハズレでもないけど。
でもそれ性格と関係無くない?

「ぶぶー。お父さんが冬彦でお母さんが春美でーす」
「惜しいわね」
「へー」

きゅるりと行きたい場所に丸をつけると、いち早く委員長が反応した。
顔を近づけて文字を確認する。

「なに?」
「ディスコ」
「却下です」

なんで!

「一応どこ回るか先生に提出するんだから、そういうのはダメです」

やっぱり?
あんなのもうその辺じゃ見られないのになぁ。

「しょうがない、いつか一人で行こう」
「ストリップショーを見にか?」
「うん」

さすが巽、よくわかってる。

「まぁ大体行きたいとこには丸つけたわね」
「そうだね。野沢君と能登代君はあまり喋ってないけど大丈夫?」
「俺は別に大丈夫だよ」
「俺もそれでいい」
「HRの時間余っちゃうわねー」

のほほんと誠二があたしの頭上から声をだした。
そのままくったりとあたしの頭の上にあごをのせた。

「誠二重い」
「レディに失礼よ、アキちゃん」

なにがレディかまったく。
絡んできた誠二の手に先ほど使っていた赤ペンで落書きをする。
これくすぐったくてやられんのヤなんだよねー。

「あははは、くすぐったい〜!」

うひひ。
誠二の手の甲に自分の名前をゴリゴリ書いていった。

「自分の物には名前を書きましょう、的な」
「あんたはジャイアンか」

痛い痛い!みどりん、あたしの頬はそれ以上伸びない!

「よし、桃松。左手貸しなさい」
「嫌な予感しかしないので嫌です」

あぁ!あたしの左頬が崩壊する…っ!
あたしはしぶしぶ左手を差し出した。

「す、ず、し、ろ、み、ど、り、…っと」

おぉ、あたしの左手がみどりんの所有物に…。

「みどり、ズルい」

言うが早いか、委員長も赤ペンであたしの右手に名前を書き始めた。
おぉ、あたしの右手が委員長の所有物に…。

「陣取りゲームだな」

巽、そんな悠長な話じゃないよ?
あたしの体なのにあたしの所有物でないとはこれいかに…!

「よし、アキ。おでこ貸せ」
「却下!」

ノリまで何を言い出すのか!
っていうかおでこって…。

「だめよノリ、アキちゃんのおでこは私のものよ」

いつからそうなった!
両手取られておでこ取られたらもうあたしどうしたらいいの…!
呆れてほぅと溜息をつくと、目の前で委員長がちょいちょいと手をやった。

「なに?」
「はい、どうぞ」

赤ペンと左手。

「…なに?」
「はい、どうぞ」

いや、だからどうしろと。

「ご自分の物にお名前をどうぞ?」

あなたいつからあたしの物になったんすか。
えーい、そんなら望み通り書いてやるわ!

「も、も、ま、つ、あ、き、おー…っと」
「あぁ!ヒナの左手が浸食されてる…!」

みどりん、この人自分から犯されにきたよ?
ほんとに委員長には危機感が(略)
名前を書き終わると、委員長にしては少し珍しい顔で笑った。
ニヤリ、みたいな。

「これで私はまっつーの所有物ってことになるよね」

まぁ実際は違いますが空想上ではそうなりますかね。



「じゃあ、『委員長』じゃなくて所有物らしく名前で呼んでもらおうかな」



…そうきたか。
デートした日から委員長は名前で呼んでほしいと駄々をこねることが多い。
そのたびにスルーしてきたからいいんだけどさ。

「よし、わかった」
「え?」
「所有物なら所有物らしくしてもらおうか」
「あれ?」

ニヤリと笑うあたしに怯える委員長。

「ちょっとアキ、何する気だ?」
「へへへ…、逃がしゃあせんでよ〜」
「もう何キャラなのよあんたは」

椅子から立ちあがると、委員長の座っている前に立つ。
怯えて縮こまっている手を広げてそこに無理やり後ろ向きに座り込んだ。



「所有物なら所有物らしく椅子になってもらおう!」



委員長の膝の上に乗ってジタバタしていると、なぜかみんな堪え切れないと言った風にふきだした。

「むぅ、何がおかしい?」
「いや、だってお前それ…ぶっくく…」
「あははは、アキちゃん可愛いー!」

なんだと、誠二。
あたしは最大限の威厳を見せつけた気なんだけど…。

「どっちかっていうとあんたがヒナの所有物みたいよ?」
「アキは身長が小せぇしなぁ。委員長の手の中にスッポリ収まってる感じがするぞ」

じたばたと足をばたつかせてみせると、また笑われた。
ぬぅ、解せぬ…。
しかもいつのまにかシートベルト状態になってる…。

「委員長」
「はい、なにかな?」
「キャッチ&リリース!」
「却下で」

うぉい!
せめて意味がわからないとかそういうとこ突っ込んでほしかったんですけど!
そんなしっかりホールドされたらお腹熱い!
あと肩に顎を乗せるなくすぐったい!



「こりゃいいわ。ヒナ、そのままそいつがこれ以上悪さしないように捕まえときなさい!」
「ついでにおでこにも名前書いちまおうぜ」

あなたたちは鬼か。



「委員長ー…」

いまだやんわりとお腹周りを包んでいる委員長に放すように目線を送る。

「名前で呼んでくれたら放してあげる」

良い笑顔ですね…。

「それはヤだ」

委員長の手を強引に引っぺがしてぴょんと降りる。
おぉう、自分の席に戻ろうと思ったらデカい態度で巽が座ってやがる。

「座りたかったらそのままそこに座ってろよ」

何これ、新しい集団いじめ?

「ふっ、ならあたしにも考えがある…」
「うん?」
「委員長、スタンダップ!」

素直な委員長は言われた通り立ちあがった。
そこですかさず委員長の席に座る。

「あ、ひどい!」
「ふふーん、座りたかったら座るがいいさ!」
「あら、いい度胸ね桃松」

あれ。
みどりんには、言ってない、よ?

「じゃあ座ろうかしら。どっこらしょ」

そしておばさんっぽい、よ?
おぉ、あたしの膝が女の子のお尻で覆われている…。
幸せもあっという間に過ぎ、背中の筋肉が悲鳴を上げ始めた。

「みどりん!重い!重いぃい〜…」
「失礼ねー。まぁ後ろに体重かけてるんだから当たり前なんだけど。
 あぁー、座り心地の悪い椅子だわー」

悪かったな!
Bカップはどーせそんなに柔らかくないよ!

「ふっ、みどりんが余裕でいられるのも今のうちさ…」
「な、なによ…」

この体勢が何を意味しているのか気付いてないね…!




「Eカップ揉み放題いえー!!!!!!」

「きゃああああああ!!!!!!」




ゴンッ ガッ ドッ ギュルゥ

「みんな、教室でリンチはないんじゃないかなー…」
「自業自得だろ」

ハンカチだけでも渡してくれるノリは優しいね…。
でも真っ先に頭に拳骨落としたのは忘れないよ…。
強制的に叩きだされた椅子の上にはまた委員長が。
あたしの椅子には相変わらず巽が。
そうだ、おかしいのは巽だ。
なのになぜあたしが巽にネックブリーカーを受けなきゃいけなかったんだ…!
トドメをさしたのはお前だよ巽ぃぃいい!!

「はいアキちゃん」
「ありがとう誠二」

手を伸ばしてあたしを立たそうとしてくれたのは嬉しいよ、誠二。
でもあんたあたしのほっぺたにビンタくれましたよね。

「まったくもう!あんたといるといつか絶対妊娠するわ!」

だからみどりんあたし女だってば。
そのうえみどりんが妊娠する前にあたしが死ぬ気がするよ?
あの体勢のまま肘であたしのみぞおちにかなり強いのくれましたよね?
もうあたしに優しい人は委員長しかいない…!

「うぅー、委員長ー」
「やっぱり、自業自得、かな?」

そんな可愛らしく小首を傾げられても嬉しくないです。
あ、でも撫でてくれる手は嬉しいです。
いや、待てよ私。
委員長=優しい=何をしても怒らない…?

「うん!委員長だったら手荒なことはしないはず!」
「へ!?」




「よし、CカップGO!!!」

「させるかぁーーーーーー!!!!!!!」




おぉ、どっから湧いて出た武下。
お前紳士なんじゃないのかよ、女の子に全力でソバットかます紳士が居るか…!?

「大丈夫ですか、目片さん!」
「あ、うん。私は平気だけど…」

そんな憐れな目で見ないでおくれ。
夢に破れた女をじろじろ見るなんて失礼極まりないよ委員長。

「良かったわね、アキちゃん
 あのまま武下君が倒してくれなかったら命は無かったわよ」

誠二のセリフの裏にはもちろんみどりんが居る。
そうだね、委員長に手を出しても結局はみどりんに殺されるんだね。

「じゃあ誠二で我慢しよ…」

ぺたぺた。

「アキちゃん、楽しい?」
「あんまり」
「でしょうね」

すごく…パッドです…。

「なんだアキ、欲求不満なのか?」
「巽はオブラートに包むってことを覚えようか」
「お前に言われたくねぇ」

ほら、春だし。
変態の増える季節だって言うし。
そのうえ家に帰ったら夜な夜な猫の発情期みたいに隣の部屋から声が聞こえて来たりするし。

「あーぁ、いいなー、ノリは」
「なんでそこで急に俺に振るんだよ」

毎晩相手してくれるお人がいてよござんすねぇ。
へっ、グレてやる。

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