授業は真面目に聞きましょう。1 (咲等)
体育というのはどうしてこう楽しいのか。
こんな学校に来てしまったからには体育なんてもう戦技訓練とかそんなのかと思ってたのに…。
実は普通の体育もあるなんて…。
「ソフトボール楽しー!!!」
「咲等、気持ち悪い」
ひどいなぁ、ニャヒル。
楽しいじゃない、ソフトボール。
「いや、楽しいっちゃ楽しいけどお前みたいに悦にまで入られると気持ち悪い」
そんなにひどいかな…?
「玉打って投げて捕るゲームでそこまでハッスルする意味がわからん」
「ドラマがあるんだよドラマが!」
「体育ごときでそんなドラマは生まれない」
そうかなぁ。
球技=青春って私だけ?
「そんなに青春したけりゃ美月呼んでこりゃいいじゃんか」
「違うクラスだよニャヒル…」
でも美月のクラスってあの辺じゃなかったっけ。
校舎の方をよく見ると、窓際で一際栄えるリボンが見えた。
「あ、美月」
「咲等、気持ち悪い」
また言われた…!
「なんで!?」
「どうやったらこの距離で美月ってわかるんだよ」
「えー、でもリボンとかわかりやすいよ」
ブーブー言ってるニャヒルの横でぶんぶんと手を振ると、控え目に手が振り返された。
うーん、可愛いな。
「あっちも気づいてんのか…」
「帽子のおかげじゃないかな」
「あー、まぁ咲等はわかりやすいしな」
動くたびにびょんびょんと揺れる帽子のポンポン。
目立つのは好きじゃないけど、知り合いから一目でわかるというのはありがたい。
しばらくそうしてると、ニャヒルがニヤリと笑った。
「…今度の体育で帽子はずしてみようよ」
「いいけど」
次の日。
「いいか、あっちがやるまで手ぇ振っちゃダメだぞ」
「うん」
窓際から見える美月に向って手を振りたいのを必死でこらえる。
うぅ、見えてるなら手を振りたい…!
「もうパブロフの犬だな」
「きゅぅん…」
めげそう。
しかも帽子かぶってないから落ち着かない。
「さ、手ぇ振ってくるかな」
「どうだろ」
目線だけはじーっと美月の方に。
美月は見えてるのかなー。
むしろ授業中にこんなこと試すほうがおかしいんだけど…。
「そういや思ったんだけど…」
「あ!!」
ニャヒルが何か言おうとしたのを遮って声をあげてしまった。
だって美月が手を振ってくれた!
嬉しくてぶんぶん振り返すと、また少しちょこっと手を振ってくれる。
「ニャヒル!嬉しい!」
「あぁ、そう…」
「あ、次私の打順だ!行ってくるー!!」
「…美月って咲等の帽子取ったとこ見たことないんじゃ……。愛って、怖ぇ〜…」
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