近頃の若いモンは5 (咲等)
「はいニャヒル」
「?」
ニャヒルに渡されたのは白い紙。
「これはね、おまじないなの」
「おまじない?」
乙音ちゃんは教室に来て真っ先にそれを渡した。
まだクラスメイトは帰っていなくて、騒がしい教室。
美月もスギも真由もいない時間帯。
「なんだ?ただの紙切れじゃんか」
「ぶー!魔法の紙なの!」
魔法の紙?
ニャヒルと二人で顔を見合わせてみるけど、まったくわからない。
「とにかく、捨てちゃダメだからね」
それだけ言うと乙音ちゃんは掃除当番だったと言って教室へ帰っていった。
「なんだろう?」
「さぁ?」
付箋のようにも見えるけど、それにしてはすごく無地で本当に真っ白。
「イタズラに100円かける!」
「最初から疑ってかかるのはどうなのかな」
けれどやっぱり何が書かれてるわけでもなくて…。
「なんなんだもう」
「どうしたんですか?」
「あ、美月」
もうそんなに時間が経ってたんだ。
これがイタズラなら大成功だね。
「あら、ニャヒルさんも頂いたんですか?」
「も、ってことは美月も貰ったの?」
「他の人にですけど」
ほら、と渡されたのは文字入りの白い紙。
そこにはぼんやりと携帯のアドレスが書かれていた。
「今購買で売り出されてるんです。
水晶と同じ要領で魔力を込めるとあぶり出しみたいに光って文字が浮かぶんです」
へぇ、なるほど。
でもアドレスを書いて渡すってこれってラブレターみたいなものなんじゃ…。
美月ってラブレターとか貰ってるんだ…。
あれ、なんで私ショック受けてるんだろう。
便利ですよね、なんてまた一枚紙を取り出した美月。
「美月、モテモテじゃん」
ニャヒルが私の言いたいことを言ってくれた。
うーん、なんかちょっと胸の奥がチクチクする…。
「あ、いえ、これは…」
美月はちょっとだけ焦ると、きゅっと私の手を握ってきた。
離れた手のひらにはさっきの紙。
「?」
「これ、は、その、咲等さんに…」
私?
「私、美月の携帯のアドレスは知ってるけど…」
「そ、そうではなくてですね…。お、おまじないなんです…」
おまじない?
「そういやさっき乙音もそんなこと言ってたな」
「何のおまじない?」
「えっと…」
「文字見てもいい?」
コクンと頷いたのを確認すると、手のひらに載せてくるりと魔力を込めた。
「名前、だね」
「名前、だな」
「女子高生にアリガチなおまじない、というヤツです」
少し恥ずかしそうに美月は説明をくれた。
自分の名前を書いた紙を相手に渡すと、ずっと一緒にいられるとかなんとか…。
「私も購買に行こうかな」
にっこりと笑って美月の頭を撫でた。
ポケットの財布に貰った紙を忍ばせて、ちょっと幸せな気持ち。
おまじないって、すごいな。
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