Lily memo %



第九話 前編



--aya--


はぁ…見つからないなぁ。

「援軍はかなり増えましたが、肝心の乙音さんが見つかりませんね」
「うーん、ニャヒルにみつけてもらうわけにはいかないしね」

ニャヒルは今全力で逃走中。
ほとんどの生徒はニャヒルを追ってるから楽といえば楽かな。
スギもなるべく騒ぎを起こして生徒を引き付けてくれてるみたいだし。
そんなわけで援軍を頼める見込みがあるところには頼んだので私たちは乙音ちゃん探し。

「咲等さんは大丈夫でしょうか…」
「どうだろう、分散したとしか聞いてないし…」

そうして走り回っている間に、ピョコンと揺れるピンクの帽子を見つけた。

第九話 サポーターズ・カーニバル




「咲等!!」


呼んだけど振り返らなかった。
あれ、聞こえてないのかな。

「あ、そうだった!」

咲等はそう言うと、急にこっちに振り返った。

「咲等さん、無事だったんですね!」
「あ、うん、美月…も無事で良かった。あーやも大丈夫?」
「お、私たちの心配なんて咲等ったら一丁前じゃない」
「いや〜、えっとニャヒルってどこかな」

咲等ちゃんはわたわたと美月の手をぎゅっと握るとそう切り出した。

「え、えっと、咲等さん携帯は?」
「使えなくって!」
「はぁ…」

美月、手、見過ぎ。
まぁいっか。
私は自分の携帯を取り出すと、咲等ちゃんに渡した。

「じゃあ、私の携帯貸してあげるよ」
「!、ありがとうあーや!!」




ぎゅー。




…まさか咲等ちゃんからハグされる日がくるとは…。
あ、美月。その目線怖い。
これはひきはがさないと…。

「わ、私はたぶん単独行動をとることはないから、遠慮しないで」
「うん!助かるよ!それじゃあ!」

咲等ちゃんは元気に走り出すと、手を振って去って行った。

「あー、びっくりした」
「ずるいです、あーやさん」
「私に言われても」

それにしても咲等ちゃんのあのはしゃぎ様。
乙音ちゃん見つかったのかな?
聞いておけばよかったかな。

「よしよし、じゃあおすそわけしてあげる」
「おすそわけ?」

ちっちゃな美月をぎゅーってする。
これで間接ハグだから許して美月。



「…お、お邪魔しました……」



え?


「乙音さん!!!!!」
「乙音ちゃん!!!!!」


物陰から出てきたくせにまた隠れていく乙音ちゃん。
しまった、変なところ見られちゃった。

「乙音ちゃん、無事だったんだね!」
「おかげさまで…」

だから物陰から出てきなさいって。

「今までどこに居らしたんです…か?」

なんで最後区切ったの。
ん?あれ?
待って、でも私もなんか違和感が…。







「みぃ〜つけたっ♪」







え。
一瞬で青い炎に包まれる。

「うわっ!?」
「乙音ちゃん!」

すぐさま乙音ちゃんが隔離されてしまう。
っていうか青い炎って…。

「ふふ、やっぱりね?私の言った通りでしょう?」
「そうですね、会長の言った通りでした」

やっぱりー!
会長と副会長ー!
さっそく死亡フラグじゃん!
乙音ちゃんだけ逃がそうにも隔離されててどうしたものか…。

「1年生仲良し軍団の中で、一番強いのは美月・アレクサンドさんだもの。
 じゃあターゲットをアレクサンドさんの傍に置くのが一番安全でしょう?」
「相手によりますけどね…」

美月も苦い顔をしている。
さすがの美月もあの会長さんにはかなわない…か。
倒すことは不可能だから、なんとか乙音ちゃんだけでも逃がさなきゃ。
会長の魔法をどうにかしないと、か…。

「さて、問題です♪
 相手に一瞬の隙も与えず一網打尽にするにはどうすればいいでしょう?」

いち、もう、だ、じん?




「大型魔法…  ペトロンボム」




ヤっバい!
これ無理!!!!







「広域守護魔法!!!!チックバックル!!!!!!!!」







うわまぶしっ。

「後輩いじめ、良くないんでない?」

出た。
どこかでは出てくると思ってたけど…。
毎度いいところで出てくるなぁ。

「真由さん!」
「はーい!一年生の味方!野中真由でーっす!!」

うわ、今日テンション高い。

「真由、あなたどこから来たの?」
「おかしいですね。真由対策を施しておいたはずなんですが」
「私は野良猫扱いか」

若干そんな感じです。
でも正直ありがたい。
さっきまで緩みきっていた生徒会の雰囲気がピリッと張り詰めた。
対策をしていたということは真由さんには来てほしくなかったということだ。

「ははっ!なんだ、必死になっちゃって。乙音ちゃんに聞かれたくないことでも聞かれたのかなぁ?」
「真由、あなたわかっててやったわね?」
「いやー?私は世間話をしただけですけどぉー?」

わぁ、真由さん割と本気だなぁ。
全力で挑発してる…。

「さて、美月にあーや。脱出ぐらいはできるね?」
「はい」
「じゃあ、よろしく。咲等も乙音ちゃんも美月に任せるよ」
「…はい、お気をつけて」

美月はニコリと笑うと、水魔法で炎を消しだした。

「ずいぶん咲等さんを気に入ってるのね」
「気に入ってるどころか、今の私は咲等に逆らうことができないのさ」

ん?どういうこと?

「咲等には【針千本】を渡しているからね」
「…裏ルートを使ったわね」
「裏ルート、ですか?」

裏ルートってなんだろう。

「【針千本】は契約者を裏切れないように、
 強制的に契約者の望む場所に相手を送り込むワープができる」
「つまり、あなたは奥井咲等さんの望み通り、山本乙音さんを救いに召喚されたのね?」
「そう、その通り」

会長さんはカチャリと青柳刀を鳴らした。



「聞くけど、乙音ちゃんを捕まえてどうする気?」
「…記憶を消すのよ」



記憶…?

「便利だとは思うけど、能力に興味はないわ。
 でも山本乙音さんは聞いてはいけない情報を聞いてしまった」
「聞いてはいけない情報?
 広められたら困る情報でしょ。
 示談じゃ済まされないの?」
「…えぇ」
「ふぅん」

なんだかよくわかんないけど、乙音ちゃんの記憶をいじるなんて冗談じゃない!
生徒会だかなんだか知らないけどそこまで偉いわけ?
もう何がなんでも乙音ちゃんは渡すもんですか!

「美月!急いで!」
「もう少しです!乙音さん離れて!」
「う、うん!」














--mayu--


あの調子ならそろそろ逃げてくれるだろう。
麻奈と愛梨さえ押さえておけば大丈夫。
そこらへんのに負けるほど弱い子たちじゃない。

「愛梨だけでも通れないかしら」
「させないさ」
「あら、愛梨のことを攻撃できるの?」

確かに。
愛梨のことは出来れば攻撃したくない。
でもまぁ、『出来れば』だし。
やろうと思えば、やる。

「愛梨」

だから、やろうと思えばやるって言ってるじゃんか。
走り抜けようとした愛梨に向って跳躍すると、蹴りを放つ。
ちぇ、当たらない。

「…本気?」
「本気っ」

短く戸惑う愛梨に、ニッと笑って下がるようにもう一撃蹴る。

「けどまぁ、確かに心苦しいので」

自分の魔力の契約先を探って、愛梨の魔力源にリンクする。

「!」

今気付いたって遅い。
パートナーである特権を利用したのは初めてかも。
愛梨の魔力が空っぽになるまで奪う。

「真由、外道よ?」
「麻奈に言われたくないよ」

立てなくなった愛梨を端に転がし、改めて麻奈を見据える。
どうやら後輩は逃げ切ったらしい。
あとはこいつを『倒す』だけ。

「余裕のない顔をしてるねぇ、麻奈」
「あなたと本気でやり合えば、時間がかかるもの」

ふん、麻奈らしい。
最初から誰も信用してないんだこいつは。
たくさんの人を使って乙音ちゃんを追い詰めて、止めは自分で。

「…ねぇ、敵わないって知ってるのにやるのかしら?」
「どうだか。三度目の正直ってあるかもよ?」

それに、何もしてこなかったと思わないでいただきたいものだ。

「本契約ってさ、仮契約に比べてデメリットが高いのはなんでか知ってる?」
「…噂、本当なのね」
「うん」

本契約にはデメリットが多い。
どこでも良かった粘膜接触が、マウストゥマウス。
上書きできた契約相手が、難しい手順を踏まないと解約できない。
なら、それと対等のメリットとは。




<心の深くにある力
 体に集いし力
 彼の者との永遠を結び、力を求める。我らを繋げ!>




一人でのパートナーとのより強いリンク。
そしてそこから生み出される、『第二のライフウェポン』。

「第二、ね。便利だこと」
「まったくもって」

ただ、非常に身体が『痛い』。
ほぼ麻痺した私の身体でこの痛さ。
どれほど身体に負担をかけてるんだかわかったもんじゃない。
本来慣れ親しんだものではない武器を扱うことは予想以上に自分を苦しめるようだ。

けど、知ったことじゃない。

私が死んだところで誰も気にしない。
あぁ、でも咲等たちに会えなくなるのは、少し残念かな。

「それは何?形としては飛び道具かしら」
「これから戦う敵に自分の手の内を喋る人間がいると思う?」
「いないわね」
「わかったら、始めようか」

倒してみせる。
今度こそ。



愛梨には悪いけど、私はこいつを守る気なんて、更々ないのだから。

back to FCmenu
back to top
designed by inertia