--sakura--
「1年生、ミッションだ!」
この頃になると、私の感覚はほとんど麻痺状態。
あぁ、ニャヒルに至っては悟りを開いてる…。
「ふむ、何事も経験だ、咲等」
楽しそうでいいね、スギ。
顔輝いてるよ…。
「…頑張れよ、お前らにとってはかなり重要なミッションだ」
「?」
やけに真剣な顔をする牛尾先生。
その内容は……
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「乙音を?」
「守る?」
こくりと頷く牛尾先生。
乙音ちゃん何かしちゃったのかなぁ。
「待ってよ先生。あたしのパートナーなのになんでそんな大掛かりなんだよ」
一人でいいじゃん、ってニャヒル結構強気だねぇ。
でも一体誰から守るんだろ。
あと乙音ちゃん自身は今どこに居るのかなぁ。
とりあえず美月にメールしよう。
「山本乙音には特殊能力があるんだ」
「特殊?」
「補助魔法しか使えないだろ?」
乙音ちゃんが今まで使ってきた魔法といえば、足を引っ掛けるトラップ魔法だったり、
魔法力や体力を補助する魔法。
ニャヒルと乙音ちゃんの連携といえば大概が乙音ちゃんがニャヒルに保護魔法をかけたり、ニャヒルの脚力や腕力を少しあげるといった感じのものだった。
「山本乙音は補助魔法しか使えない人間であるとともに、補助魔法のエキスパートでもある」
エキスパート。
そうなのかぁ…、ああいうもんなんだと思ってたけど…。
それってやっぱり凄いことなのか…。
「誰を味方につけてもいいぞ。ミッションだから参加した者全員に成績をやろう」
ぜ、全員に?
「すっごい太っ腹だね」
「…相手は誰ですか」
黙っていたスギが考えるように顎に手を当てた。
そうだ、そんなに凄い内容なら相手もすっごいかもしんない。
…あ、なんか嫌な予感してきた。
「…生徒会、全員だ」
え、なにそれイジメ…?
「なんで私たちの相手って軒並み生徒会なんですか…?」
「人数の都合だ」
ひどすぎる…。
「でもなんで生徒会が乙音を狙うんだよ」
「確かに。乙音ちゃんの能力のことぐらいなら生徒会の人知ってるんじゃないですか?」
「いや、知らなかったようだ」
牛尾先生は難しそうに眉を寄せると、ふむと唸った。
それから若干夕暮れがかった空を見上げ、難しいなと言った。
「とにかく、山本乙音に会えばいい」
「でもその肝心の乙音が…」
「牛尾先生はどこにいるか知ってるんですか?」
牛尾先生はきゅっと首をひねった。
「知らん!」
…そうですか。
「とにかく乙音ちゃんを探さないとってことかぁ」
「その前に仲間探すだろ」
「迎えに行ったほうが早いな」
「生徒会全員、ですか?」
「…本気?」
「なんてまた壮大なミッションを…」
二人は、盛大にため息を吐いた。
美月もあーやも、生徒会相手はやっぱり辛いみたい。
「どうしようか」
「まずは乙音さんの無事を確保しないといけませんね」
そうだね。
どこにいるんだろう。
ニャヒルはわからないみたい。
「誰を仲間にしてもいいんでしょ?」
「あーや、心当たりがあるの?」
「乙音ちゃんといえば決まってるじゃない」
ねぇ、とあーやがニャヒルを見ると、ニャヒルは首をかしげた。
「乙音ちゃんは中学からずっと新聞部なんだよ?」
「あ、そっか!麗華先輩!」
「ぴんぽーん」
親しそうだったもんね。
確かに知ってるかもしれない。
「せっかく誰を仲間につけてもいいって言われてるんだ。
もっと仲間を増やさないか?」
スギの言うことももっともだ。
生徒会相手に自分たちだけで敵うとは思えない。
「わかった。じゃあ二手に別れよう」
「いや、三手だ」
スギ?
「生徒会も動いてないはずがない。
ましてや私たちの行動は遅いくらいだ」
うん、それは確かに。
全員で頷く。
「私が情報を錯乱させる。なんだったら生徒会の囮だって引き受ける」
「無茶だよスギ」
「いや、一人ならできるさ」
スギはニヤリと笑った。
「私はこの学園で誰より速いんだぞ」
…かぁっこいい。
「1年生の中で、一番速いんじゃなかったっけ?」
「今なら誰より速いさ。それに戦わずに逃げるだけなら絶対に捕まらない自信がある」
スギって変わったなぁ。
会った当初は「逃げるなんて許さん!」とか言う人だったのに。
でも誇らしげなスギは見ていてとても気分が良い。
「じゃあスギは錯乱ね」
「あとはどうしよう」
「美月と咲等は一緒の方が良くないか」
「いや、美月とあーやに増援を頼もう」
ニャヒルは真剣に言った。
「あたしと咲等は外部性でまだこの学校に知り合いが少ないんだ。
だから内部性の美月とあーやに増援を任せたほうがよりちゃんとした増援が望める」
うん、それもそうだね。
美月と離れるのは少し不安だけど、美月は強いから大丈夫。
ただどちらかというと…。
「咲等ちゃんとニャヒルが心配だなぁ…」
…あーや、ばっさり言うね。
「なんとなく咲等ちゃんとニャヒルって負け癖がついてる気がして〜」
たははって笑いながら言われても…。
「大丈夫だ」
お、ニャヒルすごい自信。
「逃げるだけなら!!絶対イケる!」
え、それどういう自信?
「じゃあそういう方向で」
「え、待ってよニャヒル」
慌てて追いかける。
ニャヒル、忙しないな。やっぱり心配なのかなぁ。
早く見つけてあげなきゃ。
「麗華先輩!」
「ニャヒル」
新聞部の部室は暗く、やけに静かだった。
他の部員はいないのかな。
「ニャヒル、あんたどっち側?」
「ど、どっちって?」
まさか新聞部も敵なの?
「乙音の場所は知らせないわよ」
「なんやったら、相手になるで」
どっしり構える先輩方。
うぅ、怖い。
「ち、違います違います!」
「あたしらはミッションで乙音を守りに来たんだ!」
「ミッション?」
事情を話すと、やっと麗華先輩はその緊張感を解いてくれた。
「ごめんごめん、つい誰もかれも敵に見えちゃって!」
「あのなー!あたしは乙音のパートナーなんだぞ!」
「そういえばそうだったっけ」
麗華先輩は一つ深呼吸すると、はい、とあるカメラを手渡した。
デジタルカメラだ。
一つの写真にはある風景が映っている。
「なんすか、これ」
「乙音の現在地の目線よ」
「目線?」
こくりと頷くと麗華先輩は私たちを部室から追い出した。
「ここはこれ以上の情報は出さないわ。もう行きなさい」
「とにかくこの景色が見える場所に行けばいいのか?」
「そういうこと。それじゃあ頑張ってね」
「麗華先輩たちは…?」
ニャヒルの声にニヤリと笑う。
部室からゆっくりと関西弁の相方さんも出てくる。
「追手はもうあなたたちを追ってきてるのよ」
耳を澄ますと何人かの足音がする。
でも先輩たちが…。
「行くぞ、咲等!」
「へ、ニャヒル!?」
「先輩たちがそう長く足止めしてくれるかよ!あたしらが見えなくなったら速効逃げ出すはずだ!」
あ、そういうことかぁ。
あれ、でも写真の場所わかってるの?
「新聞部なめんな!」
ニャヒルはニヤリと笑うと、私を外へ連れ出した。